さようならアルルカン
シェイクスピア作「ハムレット」のTo be, or not to be…初めて知ったのは氷室冴子さんのデビュー作「さようならアルルカン」今でも衝撃的すぎて…何度よんでも打ちのめされる大好きな作品です特に表題作と「妹」が素晴らしすぎたここから派生した「シンデレラ迷宮」ですっかり心を鷲掴みにされましたランキングベスト5に入る優れた名作です当時興味の無かった文豪や名作の全てに鮮やかな色がつき、貪るようにあらゆる作品を読み出して、はては海外作品まで漁るきっかけに…枯れかけた心に心肺蘇生してくれた豊かな滋養でした本日出勤します10:00〜16:00ご用命をお待ちしてますiPhoneから送信
からくり箱の中身は鍵ではないだろうか
そう思って押入れを探した
手のひらほどの軽い箱だ
中身は限定される
からくり箱を開けようと弄り回したものの
さっぱり開かない
内緒だ
ふと祖父が頭上で呟いた事がよぎり、
まだ誰にも話せないままだ
結局、業を煮やして
祖父の家に箱を開ける手がかりがないか
探しに出かけた
ところが祖父亡き後に気が弱くなった祖母は
姉夫婦の元に身を寄せたので
久しく誰も訪れなかった祖父の家は
道なりすら忘れてしまった
気づけば両側に立派な椿の垣根が続くばかり
いい加減引き戻そうと立ち止まって
椿の垣根の向こう側をふと見ると
ぼとりと椿が落ち、犬の吠え声がした
ふと祖父の家を訪れる度に
吠えられていた事を思い出した
当時は犬が大きく見えて怖かった
外飼いなのだろうか
犬は変わらず吠えていた
気を取り直して、さらに椿の垣根を
進むと祖父の家が見えた
煉瓦造りの瀟洒な黒い鉄門扉の
蝶番が時間の経過を知らせるように
ぎいと音を立てた
(続く)
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