箸にも棒にも掛からない
箸にも棒にも掛からないそう言われた思春期自分でも、なんとなく思っていたぽつんとたたずみ、終始1人誰かに聞かれた答えに「なんか違うんだよねー」と離れてゆく人、人、人路傍のうす汚れた猫だけが擦り寄り、外で飼われた犬だけが匂いを嗅ぐ共働きの両親はどこを見ていたのか仕事か将来か日々の暮らしかその眼差しは私をすり抜けて遥か遠くをみていた誰もが自分を透明な何かのように捉えて視野にも入れないはたして自分は生きているのか死んでいるのかすら分からないまま夢うつつを彷徨う幽鬼のようだと思ったあの時、私は青空の果てを見たビルの屋上で寝転がり目の前の広大な青空の移りゆく様を川辺のきらめきを何時間も眺め日が暮れるまでいたその素晴らしいまでの、圧倒された美しさ慈雨のように染み込む優しさ目が見える事の感謝を心臓を握られるような衝撃を生きる事の奇跡を感じた当たり前なものなど何一つとしてなく自由とはこんなにも寂しく、美しいアイデンティティなどない、存在する意義もない冷徹とした、ただの「生」を見た火曜日出勤します10:00〜16:00ご用命をお待ちしてますiPhoneから送信
消毒薬の独特な香り
ツルツルしたリノリウムの床
案内する電子音、点滴を吊るガラガラ音
リズミカルな足音
待合室は人で溢れていた
受付に並ぶ列に目をやりながら
いずれ自分も同じ道を辿るのかと
うんざりする
無機質な廊下を歩いて
検査に次ぐ検査で行ったり来たりした
どこか疲れた影を見せる看護婦の案内に
黙って付き従う
指示を受けた席で待ち
手渡されたファイルを持って次へ
ベルトコンベアに乗った空港の荷物のように
順調に進んでいく
そして会計の精算機へ
全てマニュアル通りだ
もし私が賢くて違う人生を歩んでいたら
このマニュアルのように
すんなり人生を進めていたのだろうか
皆幸せだったのだろうか
時折り、そんな風に思う
火曜日出勤します
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