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高樹の写メ日記

未解決のはなし

09/08 07:25
未解決のはなし
いえね、仲良く遊んでいた女の子が
おりましてね。

家の斜向かいだったもので、よく遊びに
行ってまして。
遊んでくれた女の子は3つか4つ年上の
お姉さんで、いわゆる鍵っ子でした
女の子のお母さんはいないものですから
家の中では遊びたい放題で。

よくテレビを付けて、お人形遊びも
しましたし、お菓子も食べました。

夕方になると、その女の子もお父さんと
一緒に銭湯に行くものですから、お風呂で
鉢合わせしたりして。
はしゃいで長湯しておりました。
女の子の使うビオレのレモンの香りが
大人だなぁと思っていましたよ。

ある日、いつものように遊ぶ約束をして

約束の時間に、その女の子の家に
向かいましてね。
ピンポンと鳴らすんですが、
反応がありません。

たまにトイレに入ってたよ、なんて事も
あったものですから、
試しにドアノブを回したら簡単に開きまして
中は明かりもなく薄暗くて。

〇〇ちゃーん?と呼びながら玄関の上り框に
身体を寄せてみると、見知らぬおじさんが
居間に立ってましてね。

銭湯でよく女の子のお父さんに
挨拶してましたから…
居間に佇むおじさんは、
全く知らない人だと分かるわけです。
そのおじさんと目があい
何故でしょうか、無性に怖かったのを
覚えていますよ。

〇〇ちゃんは
どこに居るかと聞かれましてね。
〇〇ちゃんの親に頼まれて、
呼びに来たんだと…
ざらっとした、嫌な話し方でございました

咄嗟に、学校に忘れ物をして
先生が探してたから呼びにきたと、
嘘をついてしまいました。

これは学校の朝礼でよく聞いた、
知らない人についていかない以外に
怪しい人にお友達を聞かれたら
そう言って学校に伝えにいく訓話でして。

〇〇ちゃん居ないみたいだから帰りますと
斜向かいの自分の家に駆けて行きました。

いつもは近い家が、
やたら長く感じましたねえ
また家の玄関がガラスの引き戸ですから
力の加減で開きにくくなるのです。
恐怖で身体が震えましたよ。
その見知らぬおじさんに、
捕まるんじゃないかってね

転がるように家の中に入って、
おとうさーんと普段なら呼ばない父を
必死に呼びましたよ。

夜勤明けで寝ていた父ですが、
さっと起きて来まして。
ステテコ姿の父を見て安心した途端に、
わあわあ泣いてしまいました

父に、つっかえつっかえ、
鼻水と涙を拭いてもらいながら
〇〇ちゃん家に知らない人がいる、
そのおじさん〇〇ちゃんを探してた、
居間に靴はいたまま上がっていた、
嘘ついて帰って来たと言いました

伝えるやいなや、父は立ち上がると
〇〇ちゃん家に向かいましてね。
ピリピリした様子で戻ると警察に電話して
学校にも電話してましたねえ。
あの時の事は今でもよく覚えています。

結局のところ、〇〇ちゃんは引越して
しまいました。
あのおじさんは捕まらず、誰なのか
分からないままでした。

何だったのでしょうねえ…

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証拠

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毛糸を編んでゆく模様は入れない、ただただ淡々と編む音楽をかけて黙々と絶望は足音もなく無言で編む私の正面に腰掛けて「やあ」と笑った「元気だったかい?」とも私は気づかないフリをして編み物に熱中するふと幼い頃の記憶が頭に浮かんだ腕に白い傷跡がくっきり見えるあれから何十年たっているのに巷ではリストカットと呼ばれている複数の自傷跡が消える事はなかった錆びついたカッターで切り開いていく灼熱感と贅肉がぷるぷるとゼリーのように震え、ぱっくり開いた黄色と白、案外に少ない血を今でも鮮明に覚えている他人を責められない性格は黒を黒とも言えない軟弱な意思が内側から暴れ出して肉を食い破り、いつしか外傷を羨むまでに腐敗し、すえていたいいなぁ心など傷だらけになろうと他人から見て全く分からないそのくらい何だ、そんな事、大したことない大袈裟な、自分の事ばかりだねそう言われるだけだいいなぁいいなぁそれに比べて、外傷はパッと見て分かるから心配してもらえるあの子やこの子のように他の人が心配して優しくして貰えるああ、さぞ痛くて気持ちいいだろうなぁいいなぁいいなぁいいなぁ幼稚な発想は壁のシミのようにくっきり残り、どんな時でも姿を浮き立たせる思春期には、鏡を見ると泣いて慰めた「私」は私にしか分からないこの痛み、張り裂けそうな思いや苦しみ理不尽で不条理、不平等に痛み続ける心を私なら分かってあげられる、慰められる…私だけが理解してあげられる私だけが、私以外誰一人分からない…今でも身長を測った時の柱の傷みたいに、腕の白い傷はずっとそこにあり続けたバツの悪い証拠だ月曜日出勤します10:00〜16:00ご用命をお待ちしてますiPhoneから送信

高樹

11/08 17:19UP

高樹(35)

走馬灯

走馬灯

あれはいつ頃だったろう息を止めて鼻をつまみ湯船に潜り込む見上げるとゆらゆら歪む光がきらきらとそれは美しかったきっと1人遊びが好きなのかもしれない他人が苦手だったどう接すれば正解なのか分からない昔から鈍臭い子と言われ教えられる事を理解するのに時間が大層かかった薄暗い部屋の中で、遊び方の分からないおもちゃに囲まれて過ぎゆく毎日両親は昼も夜もなく独楽鼠のように働いて私に構う時間などなかった後ろめたさがあったのだろう不憫に思ったのか、親が近所の子を招いて家の中で遊ばせた近所の子達は当たり前のように私を放置して窓や壁中にクレヨンで絵を描きおもちゃを手当たり次第に広げ、壊して飽きると他の子の家に行こうと出て行ってしまった親は散らかった部屋を見て立腹した特に壁の落書きはヒステリックにさえ感じた私は訳が分からないままに怖がり1人泣きながら部屋を片した結局壁の落書きは、取り壊す日までそのままとなった何ひとつ頼んでもいない事ばかりで望んだこともない結果に呆然とした甘え方も頼み方も怒り方も上手く出来ない泣く事だけが教わらずに出来たがそのくらいの事で泣くなと情け無いと更に怒られるので泣かないようこらえて、こらえる日々にいつか慣れてしまった本日出勤しております10:00〜16:00ご用命をお待ちしてますiPhoneから送信

高樹

11/08 10:53UP

高樹(35)